レポート
日本有数の海ごみ漂着場【プレシャスプラスチック福井】
先日、福井県の若狭町に位置する食見(しきみ)海水浴場へ行ってまいりました。
私(トンカンテラス代表の黒田)が昨年12月に辞めるまで10年近く勤めた会社では、プラスチック製品の設計開発の仕事をしておりました。
そして、世の中で言われ始めていたプラスチックごみ問題のことはもちろん耳に入りつつ、仕事でもプラスチックリサイクルの事業に携わったりもしていました。
またプラスチックごみ問題の中でも、特に海洋プラスチックごみの問題に関しては、2年前「プラスチックの海」という映画を渋谷のアップリンクという小さな映画館で見て、かなり衝撃的で、プラスチックに携わる者として罪悪感を感じたのを覚えています。
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ビーチクリーン活動初参加!
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世界の海ごみ問題については、それなりに本を読んだり、調べたりしていて、知識としてはぼちぼちだったのですが、実際に現場を見たことがあるわけではなかったので、いつかは海ごみのリアルを見てみたいと思っていました。
そこで、今回若狭町の食見海水浴場で行われるビーチクリーン活動に一緒に参加させていただくことにしました。
海ごみ回収前の説明を聞く、参加者の皆さん
地元漁師や民宿の方々をはじめとした若狭の方々や、福井市、鯖江市から集まった有志ら30人ほどでビーチクリーンを1時間ほど行いました。
海水浴場近くの駐車場から見た時には、そこまで海ごみ無いように見えていたのですが、近づいて見ると、↑こんな感じ。ビックリ。
漁網、大きなブイをはじめとして、洗剤のボトルや、ペットボトルや、歯ブラシや漁業用の仕掛けなどなど・・・。
大量のプラスチックごみを目の前にして、いかに自分がこれまでプラスチックごみ問題を知ったつもりになっていたのかということを思い知らされました。
できるだけ細かいプラスチックゴミを回収しようと奮闘中
大きなプラスチックゴミは回収しやすいのですが、細かいプラスチック達はほんと無数にありすぎて、むしろ意識から外れるくらい。それが当たり前かの如く。
細かいプラスチック達も全て回収したいのは山々だけれど、多すぎて無視せざるを得ないのが正直なところでした。
マイクロプラスチックの問題もあるけれど、その前にこの数センチサイズのプラスチックの破片達をどうするかを考えることも結構大事な気がしてきました。
数十分ほどの作業で、レジ籠が満杯。
ほんの1時間くらいの時間で、大量のプラスチックゴミ
漁網もたくさん。
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海ごみ回収作業に参加して。
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今回のビーチクリーン活動に参加したことは、自分の経験としてかなり良かった。福井県で生まれ育って、他県の人にも「福井は美味しい魚を食べられるんやで。」と誇りにしていたのに、この海ごみの現状を知らなかったことが恥ずかしい。
そして、今回のビーチクリーン活動で海ごみを回収したからといって、今年の冬は海ごみが海岸から無くなるのかというと、もちろんそうではなく、数日後にはまた大量の海ごみが漂着するという事実に衝撃。
さらに、夏の観光シーズンに入る前には、町総出でこれらの海ごみを回収して、この綺麗な海水浴場に仕立てているという事実にも衝撃。
敦賀市に位置する水晶浜(冬になるとここも大量の海ごみが漂着するスポット)
僕が福井の美味しい魚を食べている裏側では、そして夏の綺麗な砂浜で遊んでいる裏側では、海沿いに住む方々の大変な苦労があるということを忘れてはいけない。そして、海沿いに住む方々だけが頑張れば良いという問題でもないということを心に刻みました。
なにせ、この状況をたくさんの人に知ってもらうことが大事だと思いました。そして余裕があれば、興味があれば、ビーチクリーン活動に参加してみるとより実感できると思います。
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アノミアーナ西野さんの話
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今回のビーチクリーン活動の締めくくりは、若狭湾を拠点に海ごみに関する活動をされているアノミアーナという団体の代表、西野さんによる海ごみの話。
アノミアーナ代表の西野さん
西野さんとは、昨年初めてお会いして以来、時々お会いし、プラスチックゴミ問題のことや、海ごみでの商品開発などの話をしている関係性です。
海ごみの漂着状況を調べる広域調査や、ビーチクリーン活動、そして海洋ごみのペットボトルでメガネを作ったりと、海ごみに広く携わっている西野さんから改めて、今回海ごみ全体の話を聞かせていただいたのですが、ほんと知らないことだらけでした。
まず最初のビックリは、「若狭周辺は海ごみのホットスポットである」ということ。
中国や韓国などの人口集積地から、海に流れ出てしまった海ごみが、対馬海流に乗って日本海を北上する際に、敦賀半島によって若狭湾に滞留する影響で、漂着する海ごみの量が全国有数なのです。
そして、その海ごみを処理するための費用として、税金が投入されているわけですが、各市町村が毎年支出している海ごみ処理費は、約1000万円!
福井県全体としては、毎年5000万円〜1億円くらいの海ごみ処理費として税金が投入されているらしいです。これもかなりの衝撃。
もっと驚きなのは、その海ごみがどうやって処理されるかについてなのですが、ほぼ全て「埋め立て」なんですって。
この狭い国土の日本で、毎年大量に漂着するこの海ごみ達が、毎年大量に埋め立て処理されている!!?
確か、日本の埋立地ってあと20年ほどで満杯になるって言われていたような・・・。
埋立地に埋め立て出来る量が残り少なくなってきた時、需要と供給の関係で、埋め立て費用がどんどん上がるわけですよね。なので、海ごみを処理する費用は今後どんどん高くなることが明白なわけです。
ね。ヤバいでしょ?ヤバいね。ほんと。そして怖いね。
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漂着する海ごみは、海ごみ全体の5%
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あと、ちなみに世界全体の海ごみの内、漂着する海ごみって、ほんの5%くらいらしいですよ。他の海ごみは海のどこかを漂ったり沈んでいるとのこと。
こうなってくると、もはや規模が大き過ぎて、思考停止したくなりますね。
どこから手をつけたら良いかわからない。宇宙の果てしない広さを考えた時に、自分の存在がちっぽけに感じるのと同じ感覚。わかります?笑
こうなってくると、巨大なプラスチックごみ問題にどう立ち向かうのか!的な大きな話になってしまい現実的では無いので、自分ができることを小さなことでもいいから、まずやってみることが重要なんだと思うわけです。
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プレシャスプラスチック福井
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実は僕、今回のビーチクリーンには別の目的で参加しておりました。
それは、資源回収。
自宅に持ち帰った海洋プラスチック”資源”ごみ
両手で抱えるほどの海洋プラスチックを持ち帰らせていただきました。
これらのゴミは、これまでほぼリサイクルされずに埋立されてきたごみ達です。
これらを新しい製品を作るための原料にしようと思います。
そんなの簡単なんじゃないの?と思われる方もいるかもしれないのですが、これがかなり難しいのです。
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プラスチックゴミを原料とした量産の難しさ
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僕が勤めていた頃、廃棄プラスチック(海洋ではない)を原料として、製品を作りたいと思ったのですが、いくつかの理由で断念したことがあります。
「何が入っているかがわからないような得体の知れない材料では成形したくない」
「仮に、金属片が混ざっていたら、設備が痛む」
「仮に、塩ビが混ざっていたら、塩素ガスが発生して、金型が錆びる」
「製品の物性が悪いので、そもそも製品として成り立たない」
などなど。
そもそも、コストの問題としても色々なプラスチックゴミが混ざっているような廃棄プラスチックをリサイクルするコストは、バージン材(石油から精製した真っ新な材料)に比べて高いということもあります。
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プレシャスプラスチックなら解決できるかも?
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いろんな問題があり、進められなかった海洋プラスチックゴミの資源化ですが、僕が福井で始動し始めたプレシャスプラスチックは、これらの問題との相性が良いと思うのです。
最大の理由は「成形機を自分たちで作ることができる。」から。
自分たちで成形機を作ることができるということは、修理することもできるし、カスタマイズをすることも自由。つまり、金属片が混ざっていて機械が痛んだとしても、自分たちで直せるということ。
そして、作る製品に関しても、肉厚が1ミリほどしかないような大量生産品のボールペンのような工業製品ではなく、ある程度ざっくりとした成形品しか作れないというデメリットも逆にメリットになります。
例えば、肉厚が5ミリほどある植木鉢なら、落としたってそう簡単には割れない。要するに何を作るかを考えてあげれば、物性が悪い原料だとしても製品として成り立つ。ということ。
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まずは射出成形機
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世界のプレシャスプラスチックコミュニティの一員として、プレシャスプラスチック福井をスタートすることになったのですが、まず最初に射出成形機を導入することにしました。
左から、粉砕機、押出機、射出成形機、圧縮成形機
この射出成形機を使えば、こんなものを作ることができます。
あとは、アイデアとお金次第でなんでも作れちゃうわけですね。
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海ごみを埋め立てなくても済むように・・・
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海ごみを原料として、いろんな製品が作れて、そして販売できた時。
これまでは、高い税金を投入して埋め立てていた厄介者が、お金を生み出すお宝に変わることになる。
これまでは地元の人が仕方なく回収していた海ごみを、製品を作るための資源として回収したい人が日本中からやってくるようになる。
こんな未来を妄想しています。
プラスチック製品を何万、何十万個と生産してきた立場として、「プラスチックの海」を見て感じた罪悪感は胸に押し込みつつ、10年近く経験してきたプラスチックの仕事で培ったノウハウを活かせるいい機会だと思っています。
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最後に。
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なぜか険しい顔して、海を見つめる私
どういう未来が展開されていくのか、自分でもわからないですが、理解・共感してくれる人は多いはず。
仲間が増えて、同じベクトルで物事を考えれば、良い方向に進んでいくはず。
ものづくり企業が沢山ある福井の専門家たちが集まれば、不可能だって可能にできるはず。
今後の活動を乞うご期待!
プレシャスプラスチック福井のインスタグラムアカウント
https://www.instagram.com/preciousplasticfukui/